胃潰瘍

胃潰瘍とは

胃潰瘍潰瘍とは、炎症などによって粘膜や皮膚が傷ついて下の組織まで影響が及んでしまった状態を言います。ちなみに、下の組織に影響が及ばず、表面だけが傷ついて凹んでいる場合はびらんと言います。胃潰瘍は、胃の粘膜が何らかの理由で傷つき、健康な胃に備わっている自身の保護機能が障害されてしまい、強力な酸性とたんぱく質や脂質を分解するペプシンといった強力な酵素が混ざった胃液によって自らの胃壁が傷つき粘膜の下の組織まで影響が及んだ状態を言います。出血すると吐血や、黒色便となって下血することもあり、さらに深く傷がついていくと、ついには胃壁を突き抜けて穿孔となり、腹膜炎を起こすようなこともあります。
胃潰瘍の症状を感じたら、出来るだけお早めに受診し治療を受ける必要があります。

胃潰瘍の原因

ピロリ菌胃潰瘍と言うと、ストレスを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。確かにストレスや過労は胃潰瘍の一因として考えられています。しかし、近年では、胃潰瘍を起こす原因として、ピロリ菌感染と、鎮痛消炎薬であるNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の連続服用なども大きく関わっていることが知られてきました。
ピロリ菌は正式にはヘリコバクター・ピロリと言う小さな細菌です。通常、胃の中は強度の酸性であり、生物が棲みつくことが出来る環境ではないのですが、ピロリ菌は胃に入ると、自らの周りにアンモニアなどの物質をまき散らして胃酸を中和し、自らが棲み着く環境を作ります。このアンモニアによって胃の粘膜が常に炎症を起こしている状態でダメージを受けていき、ついには胃潰瘍や胃がんを発症することになります。こうした状態で、ストレスなどから胃酸分泌が過多になると更に悪化要因となります。
ピロリ菌は現在では、水道などの衛生環境が整っており、飲み水からの感染はほとんどありません。保菌者の親から口移しなどによる親子感染が中心に広がっていると考えられています。
ピロリ菌を除菌治療することで、胃潰瘍や胃がん発症のリスクはかなり低下します。
一方NSAIDsは消炎効果と鎮痛効果のある薬ですが、痛み成分であるプロスタグランジンを抑制する働きがあります。このプロスタグランジンは胃の粘膜を守る胃粘液の生成にも関係していて、NSAIDsを連続服用することで、胃粘液の生成が阻害されることになり、そのために潰瘍発症のリスクが上がってしまうことになります。
もし、なんらかの疾患でNSAIDs系統の薬(イブプロフェンやロキソプロフェンなど)が処方されていて、胃潰瘍の症状が起こった時は、医師に相談して薬を変更してもらうようにしましょう。また、市販薬でこうした成分が含まれている薬の場合、出来る限りその他の成分による鎮痛薬が無いか薬剤師に相談してみると良いでしょう。

ピロリ菌について

胃潰瘍の症状

進行すると潰瘍の傷が深くなって出血を起こし、胃粘膜に穴が開く穿孔を生じて腹膜炎になりますが、これは緊急に適切な処置を必要とする危険な状態です。下記のような症状がありましたら、速やかに医療機関を受診してください。

緊急に医療機関の受診が
必要な症状

胃潰瘍が進行し過ぎると、とうとう胃壁に穴が空く胃穿孔を起こします。そのままでは腹膜炎を併発してしまうこともあり注意が必要です。以下のような症状を感じたら、すぐに医療機関を受診してください。

胃潰瘍の検査と診断

まずは問診で、いつ頃からどのような症状が起こっているかをお訊きすると同時に、服薬の影響が無いか、服用中のお薬などについても確認します。すべてのお薬についてお訊きしますので、お薬手帳などをご持参ください。
胃潰瘍が疑われる場合は、胃壁の状態などを確認するため、胃カメラ検査を行います。胃カメラ検査中に出血している箇所を見つけた場合、その場で止血処置を行うことも可能です。また、疑わしい組織などを見つけた場合は、組織のサンプルを採集して病理検査を行うことも出来ます。胃カメラは苦しいものと思われがちですが、当院では、日本消化器内視鏡学会の専門医・指導医である医師が高度な内視鏡装置を使って、患者様の身体に出来る限り負担のかからない検査を行っておりますので、安心して受診してください。
なお、胃カメラ検査によって、これらの診断や処置だけではなく、ピロリ菌の感染検査も行うことが出来ます。胃潰瘍の治療をしても、ピロリ菌に感染したままだと、再発や胃がん発症の危険が伴います。胃潰瘍の症状が落ち着いたところで、ピロリ菌除菌治療を行うことが大切です。

当院の胃カメラについて

胃潰瘍の治療

胃潰瘍は、潰瘍が進行している活動期、潰瘍が治まっていく回復期、治る直前になって傷痕が残っている状態の瘢痕期に分けて考えることが出来ます。潰瘍の活動期に治療を始めると、ほとんどのケースでは2か月程度で瘢痕期まで回復してきます。
治療は胃粘膜の状態を改善するための薬物療法となります。しかし、もう調子が良くなったからといって、治療を途中でやめてしまうと、再発を起こしやすく、再発を繰り返すと胃粘膜が萎縮してしまい、胃がんになるリスクが高くなります。医師の指示に従ってきちんと治療を続けるようにしてください。
また、ピロリ菌検査が陽性だった方については、再発・胃がん化のリスクがさらに高くなりますので、症状が落ち着いたところで除菌治療が必要になります。除菌に成功した場合、胃潰瘍や胃がんの発症確率は大きく低下します。

活動期

胃粘膜が深く傷になり、潰瘍が進んでいる状態です。プロトンポンプ阻害薬やH2ブロッカーなどによって胃酸の分泌を抑制し、胃粘膜を保護する薬などで胃壁を守る力を増進します。また安静を保ち、お酒はもちろんのこと、喫煙も潰瘍に悪影響を与えますので、禁酒・禁煙となります。食事は消化の良い負担の少ないものを適量摂り、生活習慣にも気をつけることで回復が早くなります。
出血がある場合は、内視鏡検査の際に止血します。ほとんどが薬物治療と内視鏡による処置で治りますが、胃に穴が開いてしまった状態になったら、緊急に外科手術を行います。

回復期(治癒過程期)

潰瘍がだんだん修復され、小さくなり、周囲の炎症なども改善していきます。そのため自覚症状はかなり軽減してきていますが、油断をすると再発や悪化が起こります。服薬指示のある場合はしっかりと服薬を続け、生活習慣の改善も持続しましょう。

瘢痕期

潰瘍、炎症などは消えて、白っぽい傷痕になっています。この状態を瘢痕化といいます。この状態で安心してしまうと、元の状態になってしまうこともあります。引き続き生活習慣の改善を維持し、定期的に検査を受けるようにしてください。

TOPへ