血便の原因となる病気と症状
血便があるということは、消化管のどこかで出血が起こっているということです。肉眼で見える肉眼的血便と、肉眼では見えず検便検査によって分かる便潜血に分けることが出来ます。
血便は、その色や粘液の有無などの性状から、どの部分からの出血なのかをある程度推定することが出来ます。そのため、肉眼的血便が出た場合は、その色や性状を記憶して医師に詳細に伝えて頂くことで、判断のための参考になります。
一方、肉眼で確認出来ない微量の出血を発見出来る便潜血検査は、特定健康診査などの検査項目に含まれています。
便潜血が陽性であった場合、大腸カメラによる精密検査を行うことになりますが、それによって大腸ポリープが発見されるケースは10人に3~4人、大腸がんが発見されるケースは100人に3~4人程度です。
大腸ポリープ(腺腫)は前がん病変です。発見された場合、その場で切除してしまうことによって、将来のがん化を予防することが可能です。
血便の色から考えられる病気
種類 | 便の見た目 | 出血が推定される箇所 | 疑われる疾患 |
---|---|---|---|
鮮血便 | 鮮やかな赤 真っ赤な血液が便に付着しているか混じっている |
肛門 直腸 |
裂孔・内痔核 直腸がん 直腸ポリープ 潰瘍性大腸炎 直腸潰瘍 毛細血管拡張症 S状結腸憩室出血 など |
暗赤色便 | 出血から時間が経ち変色した暗い赤色の便 | 上行結腸など、大腸奥 小腸 |
大腸がん 大腸ポリープ 虚血性腸炎 感染性腸炎 潰瘍性大腸炎 クローン病 大腸憩室出血 小腸潰瘍 小腸憩室出血 など |
黒色便(タール便) | タール状のベタベタとした暗紫色または黒色の便 | 食道 胃 十二指腸 |
胃潰瘍 胃がん 胃ポリープ 十二指腸潰瘍 食道がん 逆流性食道炎 食道・胃静脈瘤破裂 毛細血管拡張症 など |
なお、上部消化管からの出血の場合は、下血となることの他に吐血(消化管からの出血を口から吐き出してしまうこと)となる場合もあります。
便潜血検査では、肉眼で見えない程の出血も確認出来ます。
陽性となったら大腸カメラによって出血箇所を確認することが必須となります。
血便とストレス
腸は第二の脳と呼ばれる程、神経細胞が密集している組織で、腸の神経と脳とは密接に情報のやりとりを行っています。脳と腸とのやりとりは自律神経によって行われているため、ストレスなどの自律神経を乱す要因があると、途端に腸の活動は乱れます。
だからといって、直接ストレスだけが原因で腸管から出血が起こることはありません。しかし、例えば過敏性腸症候群の場合、ストレスがトリガーとなって下痢を起こし、下痢の勢いが強いと肛門が切れて出血を起こすことがあります。また便秘型の場合は、強いいきみによって内痔核となり、そこからの出血があります。また、炎症性腸疾患のうち、難病指定されている潰瘍性大腸炎やクローン病などでも、ストレスをきっかけにして活動期に腸管から出血が起こることもあります。血便は腸内または肛門で何らかの障害が起こっているサインです。すぐに消化器内科などを受診してください。
便潜血反応陽性になったら
健康診断などで、便潜血検査を受け陽性の指摘を受けた場合、再検査となることがあります。再検査で陰性だったからと言って安心してしまうのは間違いです。
便潜血検査は基本的に大腸がんのスクリーニング検査として行われるものですが、そこで1度でも陽性だった場合、腸管から肛門のどこかで出血が起こっていたということです。
確かに便潜血検査の陽性はほとんどが痔の出血ですが、要精密検査で大腸カメラ検査を受けると10人に3~4人は大腸ポリープが見つかります。また100人に3~4人は大腸がんが見つかります。
早期に発見して適切な治療さえすれば、大腸がんは比較的治りやすいがんです。また大腸ポリープ(腺腫)も見つけた時に切除してしまえば将来のがん化を予防出来ます。便潜血検査の結果を軽視せず、また怖がらず、要精密検査の指摘があれば、必ず大腸カメラ検査を受診するようにしましょう。
検査と治療
血便は、その色や状態から、およそどこからの出血かを絞ることが出来ます。黒や暗紫色のタール便が出た場合、食道、胃、十二指腸の上部消化管、暗赤色のものは小腸または大腸の上行結腸など奥の方、潜血便は大腸の出口近くか肛門などです。
これらによって、上部消化管が疑われる際は胃カメラ検査、小腸の場合は腹部超音波検査やCT、MRIなど、潜血便や粘血便は大腸カメラ検査が適しています。こうして、推定が出来るだけで、検査を増やしてお体に負担をかけずに済むことになります。
血便が出てしまうと、びっくりして慌ててしまいがちですが、しっかりと状態、色を観察して医師に伝えて頂くことで、医師は様々な判断が出来ます。もし余裕があれば、スマートフォンのカメラなどで撮影して見せて頂くことも大変参考になります。
その上で、問診などによって、どのような経緯でいつ頃から起こっているか、付随する症状は無いか、どのぐらいの頻度で起こるのかなどの他、服用しているお薬の副作用で血便が起こることもありますので、お薬手帳をお持ち頂くか、服用されている薬を全てお持ち頂くようにしてください。
血便の原因は様々です。問診や検査によって原因が特定出来れば、それぞれに合わせた治療を行います。当院では、消化器内科・肛門内科、それぞれの専門的治療を行っておりますので、多くのケースに対応した治療を行うことが可能です。
また、血便があり、検査によって緊急性の高い疾患が見つかった場合、疾患によっては、高度な治療や入院による治療が必要になることもあります。そのようなケースでは、連携する高度医療施設を紹介してスムーズに治療が続けられるようにしておりますので、ご安心ください。
大腸がんの効果的な予防
大腸がんは、2020年の全がんの部位別統計で死亡率では男女計で2位、男性は3位ですが女性は1位になっています。さらにその数は年々増加傾向にあると言います。
しかし、大腸がんは早期発見さえ出来れば、内視鏡のみの簡単な手術で完治させることも可能な、比較的治療しやすいがんなのです。
大腸がんを、確実に発見出来る唯一の方法は、定期的な大腸カメラ検査のみです。さらに大腸カメラ検査では、前がん病変であるポリープを発見した場合、その場で切除が可能で、将来の大腸がん発症の予防となります。
大腸カメラ検査は、たった1日で、検査、診断、治療、予防までが可能な優れた検査です。がん発症のリスクが高まってくる40歳を過ぎたら、毎年定期的な大腸カメラ検査を受診しましょう。また、もし血縁の家族に大腸がんや大腸ポリープの既往がある方がいる場合、40歳に満たなくとも、定期的に検査を行うことをお勧めします。